本当に、自分はどうかしていると思う。
 何故、あんな事をしたのか。
 その理由を自分でもよく理解しているだけに、その異常さと滑稽さに、笑うしかない。


 自分が歪めば歪むだけ、弟は真っ直ぐに、素直に成長した。
 自分の思うままに、奔放に。
 それを羨ましいと思う反面、そこに嫉妬し、自分から離れていこうとする姿に、言いようの無い怒りを覚えた。


 お前はなぜ、私に背を向けようとする。
 なぜ私から離れていこうとする。
 お前は私を捉えて離さないというのに、なぜお前だけが私から離れていけるというのか…。






「クククッ…お前は私の物なのに…」





 他には渡したくないほどに、狂おしいまでに愛しいと思う反面、それ以上の憎しみが込み上げる。


 思わず夜空を見上げながら、高笑いをしたくなる。
 壊れてしまった自分の心を恐ろしいと思いながらも、わずか0.5mmでも、正気と良心が残っている事に、胸を撫で下ろす。
 それが決して越えられない壁でも。
 たったそれしか残されていない良心だとしても。
 それだけあれば、明日からまた、自分を取繕う事が出来るから。




 0.5mmの良心が、いつか壊れるその日まで。



2007.09.05.UP



あとがき


 やってやった。そんな感じです。(そして、人に壮絶にひかれる事も気にせずに、自分の書きたい物を、 思う存分、書き殴りました)
 響茜のお話も書いていて楽しいのですが、霧人のドロドロした黒い感情を書くのも、楽しかったです。 (元々、(自分が)鬱にならない程度の、アンゴラな話に心地よさを覚える、根暗人間なので)
 そもそもこの話は、成歩堂親子と霧人の関係について考えた事から始まりました。
 そして霧人はなぜ、みぬきにはノータッチだったのか…。
(成歩堂は殺そうとしていたのでしょうが、  あんなお使いをさせてわりに、みぬきとの関係についてはゲーム上、まるっきり描かれていなかったので、 勝手に捏造してしまいました)
 そして、響也に対しても、霧人の行動が腑に落ちない面があって、こういうお話になりました。
(どうして響也を殺そうとしなかったの?アニキ。
 と考えていた所、『兄の弟に対する愛情は、歪んでいる』  という結論に達して、だから殺したくても、殺せなかったのか…と)


 そして、それらの事を考えている最中、「0.5」という数字が頭の中に浮かび、それがネックとなる話を書こうと思い立ちました。
今回のキーポイントは、BLでも兄の偏愛でもなく、『0.5』なんですよ。これでも。
(おかげで苦手なタイトル付けも、 あっさりこれに決まりましたし)


 紆余曲折あり、本当は、噛み付く程度ではなかった物を、そこは何とか抑えて、BL的な表現に留めました。
 またアニキの話が書ければ…。と思います。
真野に怖い思いをさせながら…。
 歪みに歪みまくった上で、結局、自己愛的に、弟を偏愛していてほしいと思っております。霧人には。
(ははは。なんか自分、病気なんじゃないのかな?この表現)


霧人Fanにも、響茜Fanにも、壮絶にひかれた上に、野次を飛ばされる事を覚悟して…。

悠梛 翼



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