萩の月をしこたま土産に買い、笹かまぼこを程よく、そして大吟醸を三本ほどと、夕食用に牛タン弁当を購入した。

ここは、護送用の飛行機の中だが、響也は、三途の川などまだ渡りたくないので、変装したままである。

お腹が一杯になり満足したのか、茜は転寝を始め、その彼女にさりげなく、自分の膝にかけてあった毛布を掛けてやると、響也は事務官にこう告げた。

「ぼくは…さ。
 彦星みたいに忍耐強くないから、一年置きに会うとか、そういうのは我慢できそうにないんだよね」
「ほほう。万が一、日本を離れるような事になれば、他に目移りしてしまいますか?」
「違うよ。その間に、他の男に取られるのが耐えられないんだ」

 自分は、他に目移りなんてできないだろう。
 もしも日本を離れる事になれば、必死で仕事をしなければいけないほど、追い詰めらるという事だから…。

「…とりあえず、例の件を引き受ければ、しばらくはここにいられる。
 良い時間稼ぎにはなるだろう。
 だから、引き受けようと思う…」
「…後悔はしませんね?」
「それをオレに聞くのか?
 悪いけど、後悔なら既にさんざんしたよ。
 でも、何も変わらなかった…。
 今でもオレは、縛られてるんだ…彼に…。
 だから、彼の真実を受け入れるためにも、あの事件の公判を引き受ける…。
 牙琉霧人の高等裁裁判の仕事を…ね」
「分かりました」

 それが『日本に残る気があるのなら』と、最後通告と共に突きつけられた、交換条件だった。

 それで響也自信にもボロが出れば、心置きなく左遷できるという腹積もりなのだ。

「今まで、勝ち負けには拘らず。というスタイルできましたけど、今回限りは、そうはいきませんね。
 私も微力ながら協力させていただきます」
「微力って。
 まあ、君の事だからそう言って、ぼくが期待している以上の仕事をしてくれるとは思っているけどね」

 そして響也は相手に笑みを返す。

 そして茜は。
 寝たフリをしてその話を聞いていた。
 話の途中で、意識が現実へと戻されて、聞いてしまったのだが話の内容が内容だけに、妙な不安を胸に抱き、薬指にはめられた指輪を、願うように握っていた。





 数日後。
 新聞紙面を“兄弟対決は容疑者と検事で!!”などという、見出しが躍ることとなる。
 そのセンセーショナルな裁判は、後世、裁判史上に語り継がれる事となる。




The Star Festival of the 1-month delay


2007.08.07UP



あとがき


宮城の事も、仙台の七夕祭の事も、何も知らずに書いてしまい、申し訳ありません。(最初から平謝り)
もう少し調べる時間があれば、どうにかなったのかもしれませんが、仙台は行った事のない土地なので、嘘八百、『あの土地の七夕祭りは、全国でも有数の立派な祭』というイメージで書きました。

しかも、十年ほど前に他のジャンルのCP物として書いて、没にした原稿の流用なので、展開にも少し無理があるかな?とか
後、オリジナルキャラクター、秘書官を出してしまって、こんなキャラ、受け入れてもらえるかな?(キムタクさん主演の検事ドラマを見ていて、検事には秘書官が居る筈。と勝手に作り出したキャラクターです)とか、
なんか話をまとめるのに、前の話ともリンクさせないと話が進まないぞ。とか。
謝る事ばかりの作品になってしまいました。
逆裁の話を書く上で、『前の話を読まずとも、通じる内容を書く』というのを目標に書いていたのですが、早速、断念してしまいました。

前にも話の流れの時間軸を書いたのですが、この話は、「カミナリ─…」の直後(まあ、一月くらいは経過しているかもしれませんが)という事になります。
(書いているうちに、そうなってしまいました)

また、今回の真野から貰った、テーマ&コンセプトは
『一月遅れの七夕』→『宮城仙台七夕祭』→『そこでラブラブな響茜』
という物で、別に茜にツンしかさせないとか、響也にコスプレをさせた上で、必要以上に自惚れさせようとか、そんなことは思ってもいなかったのに、何か蓋を開ければ『アレ?』このコスプレ描写とか、大丈夫かな?と、非常に不安になりました。
少しでも、響茜が好きな方に、満足いただけたなら幸いです。

追伸。やっぱり血縁関係者で、一人の女性を取り合うとか、昼ドラチックな物は、響茜好きな方々には受け入れてもらえない物なのでしょうか?
(どうしても私、ある方に、『この泥棒猫!!』とか言って貰いたくて、仕方が無いのですが…)





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